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「そっか、幸せに、なれないんだ・・・。」
誰もいない部屋に、声は消えた。
トウコはソファにもたれかかったまま、天井を仰いだ。
こんなに愛してるのに。
こんなに愛されてるのに。
こんなに愛し合っているのに。
機械的にタバコを吸う。
だが、トウコの目は、冷静だった。
どこかで、この恋愛は破綻すると、わかっていた気がするから。
・・・、それでも。
トウコはまた、タバコを吸った。
別れられない・・・。
好きだから、愛してるから。
なんで、こんなに愛してるのに別れなきゃいけないの?
いつの間にか、冷静な光はうすれ、その瞳は涙でかすみだしている。
最初は道端で酔っ払いに絡まれたのを助けられたんだっけ。
バイト先でまた出会って、運命だよね・・・、仕事を丁寧に教えてくれたっけ。
はじめてホテルに行った時、あんだけ飲んでたからか、途中で寝ちゃって・・・。
去年、はじめて旅行したなぁ。楽しかった。
意外と涙もろくって、よく泣くんだよねぇ。でも泣くのは私の前だけだって・・・。
思い出が駆け抜ける。
しかし、トウコは泣きながら別れる事を決心した。
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