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「それで……
来月から"別の病院"に移る事になったの……」
「え……別の病院?」
突然のユリエ先生の転勤の話に、私は一瞬固まった……
「そう、院長に言われたんだ……
『一旦、気持ちを整理させて来なさい』って……
だから、来月から地方の小さな診療所に"応援"として派遣されるのよ」
「そんな……」
「……仕方ないよ…
今のままだと、その内取り返しのつかない大きなミスをするかもしれないし……」
ユリエ先生は戸惑いを隠せない私に対して、いつものように平然とした口調で話していたけど、次第に両手に力が入り始めて、ギュッとズボンを握りしめてた……
そして、ユリエ先生の瞳から一滴の涙が流れた……
「だけど……
悔しいよ……
自分が何も出来ないなんて……」
「……違います!」
震えた声で呟き続けるユリエ先生に、私は思わず口調が強くなっていた……
すると、ユリエ先生は驚いたように、涙目のまま私を見つめてきた。
「それは違います」
そう言って、私はもう一度アルバムを最初のページに捲り戻した。
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