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「だけど……
ヤマト君を死なせてしまってから、私の中の"自信や誇り"は一気に崩れ落ちたの……
たった"一人"でも死なせてしまった事に、ずっと後悔の思いしか残らなかった……」
「…………」
ユリエ先生の言葉に、また私は何も言えなかった……
いや……分からなかった……
励ませばいいのか……
慰めればいいのか……
普通に考えて、『医者』という仕事をやっている内には必ず"死"と向き合う時が来ると思う……
どんな名医だって、『どんな状態でも100%助けれる』と言う人なんか居る訳がない……
ましてや、ユリエ先生のように救急患者が運ばれる所に居れば、いずれにしろ、こうなる可能性の方が高い……
むしろ、"あの人"までに一人も死人を出さなかった事が奇跡に近いと思う……
ただ、"あの人"の死によってユリエ先生の中にある何かが狂ったのかもしれない……
「……そのせいかな…
あの日以来、私はよくミスをするようになったの……
薬の名前や、患者さんのカルテを見間違える事が多くなった……
……前まで、こんな事も無かったのに…」
ユリエ先生は、まるで悔しがるように唇を噛み締めていた。
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