美優の場合

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私は、恐る恐るその携帯電話を開き、壁紙などはない真っ白な画面を見た。 画面にはメール受信中の赤い文字が、幾度となく蠢いていたが、着信音などはなかった。 しばらくすると、画面にはメールのアイコンが表示され、携帯は静かになった。 私は薄暗い部屋の中で、ゆっくり丁寧に携帯を見た。 画面には日付と時効とメールのアイコンがあるだけ。 携帯の色は黒で、小さな鈴の付いた白いストラップがついている… やはり、私の知ってる人には、この携帯を持っている人はいない。 私は携帯を折り畳んで、枕元に置き、クシャクシャと軽く頭を掻き毟って横になった。 「これ…誰のだろう?」 ボンヤリと天井を見つめながら、また独り言を吐き出しながら、私はまた携帯を手に取った。 両手でゆっくりと携帯を開く。 相変わらず画面にはメールのアイコンがある。 「見ちゃおっか…見れば、誰の携帯か知る手掛かりがわかるかもしれないし、私の部屋にあるんだし、いいよね?」 そんな都合の良いことを携帯に向かって話し掛けながら、私はゆっくりとメールのアイコンをクリックした。
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