美優の場合

7/9

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「そぅ、今はまだ、あなたは私のことを知らないの。でも、もう少し時間が経ったら私のことを思い出します。でも、それはどうでもいいことなの。私は今これからあなたにお礼が言える。それが大切なの」 私はまったく意味がわからなかった。 見ず知らずの女性からお礼を言われるようなことなど、まるで思い当たらなかった。 しかも、何故こんな夜更けに… 「鈴木美優さん。あなたは私達親子をとても愛してくれました。そして、私の子供の死に涙を流して悲しんでくれた」 親子?子供の死? 子供?! 「あの子が亡くなってからも、あなたは私達のことを気に掛けてくれた。私は本当に嬉しかった」 私は混乱していた。 何が何だかさっぱりわからない状態だった。 あなたは一体誰なの? 「鈴木美優さん。本当にありがとう。そして、この一言がいいたい為に、こんな時間に呼び出してしまってごめんなさい」 彼女はとても丁寧に深々と頭を下げ、再び顔を上げる彼女の瞳は涙に濡れていた。 「それでは、さようなら」 彼女はもう一度深々と頭を下げ、くるりと私に背を向けて歩きだした。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加