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「あ!け、携帯!」
私は急にあの携帯のことを思い出し、彼女に向かって叫んだ。
「いぇ、あの携帯はいいんです。もし、良かったら大切にしてあげてください」
彼女は振り返って、少し微笑みながら会釈すると、闇の中に消えていった。
私はやっと彼女の後を追った。
しかし、暗闇の路地にはもう誰もいなかった。
私はあの携帯が気になり、バックを開けた。
そこにはヘアスプレーと、小さい鈴が付いた白く細い首輪が入っていた。
「あ!」
私は声を上げた。
その時、私の携帯が鳴った。
「もしもし?」
「もしもし、美優?今、あなたのところにもあの子のお礼をって来なかった?」
「うん、来たよ…来た」
私は結佳と電話しながら泣いていた。
結佳も泣いていた。
今夜、私達にお礼を言いに来たのは、学校でよく見る猫だった。
この猫は春に子供が生まれ、私達は子猫にそれぞれ小さな鈴がついた首輪をつけ、学校内で見かける度に可愛がっていた。
しかし、ついこの間、学校前の道で車に轢かれている子猫を結佳と見つけてしまい、二人で声を上げて泣いた。
その姿をあの猫が悲しそうに見つめていた。
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