2章

2/3
62776人が本棚に入れています
本棚に追加
/2073ページ
heaven、ヴィーナス、エンジェル、ラフォーレ… 「う~ん、ここもダメ!同伴のノルマがキツすぎ!」 何枚もの名刺や求人誌を並べ、私はイトコの由衣の部屋でぼやいた。 「朝美、ホントにやるの?」 不満そうに由衣は聞いた。 「だって、それしかないんだよ──」 私は高校卒業を目前にして、イトコの家に居候させてもらうことになった。 母がアル中で、ここ数ヶ月前までは薬で落ち着いていたが、症状が悪化して、ついに私に暴力をふるうようになったのだ。 今までは友達の家を転々としていたが、ついに宛がなくなり、心配になったイトコの両親が、私が卒業して落ち着くまでこの家においてくれる事になったのだ。 幸い、イトコの家は近所で、由衣とは産まれた時から一緒で、姉妹みたいなもんだった。 「ちゃんと就職しなさいよ」 「そんな時間ないよ。今すぐにでも家出たいし、由衣んちにずっといるわけいかないし」 本当なら高校なんていかないで働きたかった。 アル中の母にうんざりして、中学の頃から卒業したらさっさと働いて家を出るって決めていた。 でも、おばぁちゃんとの約束で、高校までは出る、と決めた。 その約束が、あと1ヵ月で果たされようとしている。
/2073ページ

最初のコメントを投稿しよう!