―壊レモノ―

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『こんばんは』 『良い夢は見れたかしら?』 少女が私の顔を覗き込む。 私は不審者に殺されずに生きてる。 『朝は来ないけどね。』 少女が独り明るく喋っていた。 こんな 真っ暗な世界で良く、笑えるな…なんて考えながら。 『お腹はすいてる?何か用意した方が良いかしら?』 『いや…いい。』 何かの、ままごとみたいだ。 こんな少女が料理を作るなんて。 私の後ろには相変わらず不審者が付いていた。 背後霊か何かの類だったりして。 この家は、寝室とあと二つの部屋で形成されてるようだ。 一つの部屋は今居る…、食卓の部屋。 黒い机に黒い椅子。 黒に見飽きて来た。 おまけに人まで黒いからな…。 『なんだかなぁ…』 『はい?何か言いました?』 『ううん…。』 『どうぞ腰掛けて下さいな。』 少女はキッチン…のような所で、カチャカチャと何かをしている。 多分、この流れだと紅茶か何かを入れているんだろう。 つっ立っていてもしょうがない。 傍の黒い椅子に腰掛ける。 此処は何処なんだ? 昨日から迷ってみても、全然解らない。 少女は言った。 歯車は動き出した、と 『はい、どうぞ?』 放心状態だった私の前にふいに現れる少女。 手渡されたのは、黒いティーカップから湯気を立たせた紅茶。 やっぱり紅茶か…。 『貴方も飲む?』 私の背後霊にも、紅茶を手渡す。 背後霊は座らずにつっ立ちっぱなしだ。 誰なんだコイツ…。
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