―収集者―

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『途方だ…』 何をして良いか、分からなくなってしまった。 三十時までに行動を起こすべく、暗闇の世界に出たが…。 どうする? 三十時まで二十三時間もある。 少女のもとに戻ってみるか? だが戻ってから、どうする? こういう時、下弦は役には立たない。 こういう時でなくとも、役には立たないが 『途方だ…』 もう一度、その台詞を呟く。 呟いた所で、無意味だが。 その時 私は見た。 下弦達とは違う人間を。 白い服装を纏った人間を、私は見た。 こんな黒だらけの暗闇の世界で、白一点の人物。 まるで下弦の白いバージョン。 髪から足まで 真っ白だった。 『ちょっ…あれ…』 勿論私は追いかけたかった。 やっと出会えた、行動のもと。 しかし下弦が許さなかった。 下弦が、私の腕を掴んだから。 『…はっ!?』 下弦に腕を掴まれたのは初めてだ。 と言うより…、下弦自身の意思での動きを見たのが初めてだった。
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