―下弦―

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私は収集者の手を思い切り振り払った。 収集者愕然。 収集者にとって、回収すべきゴミに騒がれたら それはそれは…驚くだろうな。 私は来た道をそのまま駆け戻…れなかった。 収集者に再び腕を掴まれたのと同時に この世界への鎖として… 緋いの革紐が、腕に巻き付いたから。 『はっ!何付けてんのっ!』 何を付けられたかは、よく分かってたが 分かりたく無かった。 収集者の唇が動く。 『…何処カラ来タ?』 カタコトと言うよりも…。 私の知ってる言語が、この世界の言語にくっついたような喋り方…。 って喋れんなら、もっと早く喋れ。 『…アンタの頭じゃ想像も出来ないとかから来たんだよ。何か文句ある?』 いきなり喧嘩腰の私。 こんなんだから、昔から良い事は無かった。 『此処ノ世界ノ住民ジャナイナ。死人カ?』 最後の質問には答えかねる…。 死人じゃない。生きてる。 見て分かれ。 だいたい…生きて喋ってる人間に『死人か?』だなんて… 頭がイカれてるにも程が有る。 『生きてるっつってんだろ!この訳の分からん革紐も外せ!』 私が怒鳴り散らす。 収集者は完璧に困っていた。
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