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第二幕「ハッチャケ娘アイビス…前編」
ひょんな事からアイビスと共に逃げる羽目になってしまったスクリカ…
彼女の追っ手を振り切る為に偶然にも当初の目的の洞窟へと隠れ込む事となった。
「疲れた~」と、直ぐさま横になったアイビスをよそに彼女を抱え全力疾走をし終えたスクリカは、息をゼェゼェと荒らませ前屈姿勢を取りつつ両手を膝につかせた。
しかし、それでも用心は怠らず、洞穴の周囲を一通り見渡して追っ手が居ないか確認する事を忘れない…
とりあえず、彼とアイビス以外に人らしき人の存在はない様である。
「ハァハァ……。ふぅ~…、どうやら逃げ切れたみたいかな…」
スクリカは慚く安堵の表情を浮かべ、横に寝転がっているアイビスの横に座る
「うんうん、ご苦労様~♪」
「はぁ…とりあえず君、えっと…アイビスだっけ?」先程からの傍若無人なアイビスの態度にスクリカは深くため息をつきうなだれた。
だが、アイビスはそんなスクリカの姿を一向に気にせず、さぁ一寝入り決め込もうかといった様子をとっていた…。
「うにゃ~…?」
流石のスクリカもこれにはムカッときたのだろう。普段よりも激しい口調で彼女に食い付いた。
「君が!!何で!!追われていたのか!!説明して欲しいんだけど!?」
「えっ…?………、アハハハ~♪イイじゃんイイじゃ~んそんな事どうでもさ♪ほ、ほら!スクリカも一休みしよ~」
怒ったスクリカの質問に対し、苦笑いで答え、目を泳がせるアイビス。
まるで子供が隠し事をするような態度である…
あからさまに怪しい態度を取るアイビスにスクリカはしばらくの間「ジト~~~」と見つめ続ける。アイビスもコレには参って顔を赤らめない、やや下に向いた後にボソッ、と小さく呟いた…
「…にげ……」
「…え?何?」
「くっ…、食い逃げ!!」「食い逃げか~………って、ん!?クイニゲ…?く、食い逃げぇぇぇぇー!!??」
突然の緊迫した状況の原因が食い逃げと聞き、あまりにも驚き呆れてスクリカはもう少しの所で後ろに転がりそうになった。
「な、何よ!?そ…、そんなに驚かなくても良いじゃん…!!」
「ちょ、だって…。く、食い逃げってさ………、はぁ…」
今まで必死に走った自らの努力が無性に虚しくなり、スクリカは頭を抱えて今度は食い逃げ犯を助けてしまった自分自身にため息を吐いた…
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