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しばらくして玄関のドアが開いた。
ドアを黙々と静かに開けた女性は、人の気配がする部屋の方へとゆっくり歩を進めていく…
その先には、長いローブをゆったりと被り、側に琵琶の様な弦楽器を携えた詩人風な男が椅子に腰掛けていた
「…お客さんとは珍しい…こんな所へ何の用かな?お嬢さん?」
詩人風の男はそう言うと、女性の方へ椅子ごと向き対面する
穏やかで落ち着いた雰囲気はあるが、ローブで目元を隠し、感情の読めない、警戒すべき所のある人物だ
「貴方が噂に聞いた詩人かしら?」
女性は警戒心を強め、大鎌を握り直し尋ねる
それを見た詩人はやや呆れながら
「人に物を尋ねるにしては随分と物騒だな。とりあえず、その大きな鎌を下ろしたらどうだい?」
顔色一つ変えず返答する。その言葉は偉そうにしている訳でも語っている訳でもなく、まるで先生が生徒に喋りかける様なニュアンスを持っていた…
「常に警戒心を持つのはいけないことかしら?」
淡々と女性は応える
「…いや。ところでどういう噂を聞いてきたのかな?」
少々興味ありげな顔を見せ、詩人は話を戻す
「近くの村で、ここに変わり者の詩人が居るって聞いたわ。貴方がそうなんでしょう?」
「フフッ…おやおや…変わり者の詩人…ですか」
そう言うと一呼吸置き、詩人は肩をすくめて、おどける様に話した
「私がその変わり者の詩人だとして、君は何が知りたいのかな?」
女性は表情を崩さず平然と応える…
「…四族戦争について教えてくれないかしら」
それを聞いた詩人はまた、急に真剣な面持ちになり女性の顔を見直し、そして何かハッとした表情を見せた「なるほど…。どうやら貴方には知る権利がある様だね…」
女性は少し意外そうな顔を見せ…「何?」と一声した
「…少々長い話になる。丁度お使いも帰ってきた所だし、お茶でも如何だい?」いつの間にか戻っていた妖精がハーブを手に持ち窓辺で座っていた。
「えぇ、そうさせていただくわ…」
詩人は妖精からハーブを受け取ると、慣れた手つきで紅茶を入れ女性に差し出しながら話始めた…。
「さて…どこから話しますか…」
限られた一部の者がこう語り継ぐ…
「英雄の序曲」という名の戦争譚を…
「英雄の序曲」~プロローグ~
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