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――冬
文化祭が終わって
あっという間に12月に入った。
あれから藤尾とは話していない。
というより元から話した事もあまりなく、
向こうもあれから俺に
話しかけてくる事はなかった。
そして、気がかりな事がもう一つ。
瑞希が1週間前から
学校を休んでいた。
叔母さんには風邪と聞かされているが、
文化祭の後も取れる事のなかった眼帯が
俺を不安にさせていた。
瑞希は眼帯の上に
眼鏡をかけて過ごしていた。
『目の赤みがひかなくて…』
そう語る瑞希には
少し元気がないように感じられた。
――キーンコーンカーンコーン
朝のチャイムが鳴り
みんなが慌ただしく席につく。
――ガラッ
「みんな、おはよ~」
ドアを開け入ってきたのは、
このクラスの担任の
桜井 京介[サクライキョウスケ]
である。
20代後半、独身で整った顔立ち
なので女子に人気がある。
教卓に立った桜井は全体に目をやり、
そして俺を少し見つめ目をそらした。
(桜井……
今、俺の事見たよな?)
その後、出席確認と今日の伝達を終え
最後に…と桜井が口を開いた。
「えぇ、今日も欠席している斉藤瑞希だが…
長い間、学校を休むそうだ」
「……え?」
一瞬、耳を疑った。
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