~冬~

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    中に入ると瑞希が その場に下を向いて座りこんでいた。 「瑞希」 水色のパジャマの上に そっと手を置いた。 ――パンッ その手は瑞希の右手に弾かれ、 薄く赤い跡を甲に残した。 「出てって」 「瑞希…」 「プランターの下に 鍵あるの知ってたんだね」 瑞希は相変わらず下を向いている。 「あたしは、入っていいとは言ってないでしょ」 しかし、俺は瑞希の言葉を無視して 瑞希と同じ目線にしゃがみこんだ。 「顔上げろ、瑞希」 「…いや」 「瑞希」 「絶対いや」 瑞希は首を振り、顔を上げようとしない。 …俺は瑞希の頬に手をあてた。 「ちょっと…離して、明」 手を掴み、はがそうとする瑞希。 「ごめん、瑞希」 「やめ…離して!!」 ――グイッ 俺は強引に瑞希の顔を前に向けた。    
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