~冬~

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「……嘘だろ」 「本当だよ」 瑞希は、ゆっくりと立ち上がった。 「今もね、眼鏡かけてないから ほとんど見えない。 それくらい視力が落ちてるの」 俺の位置は声の方向で判断している、 と瑞希は付け足した。 「文化祭の最終日の時さ あたし先帰ったでしょ? ……あの後、この前とは違う病院で 検査受けてたの」 瑞希は息を吐き 言葉を続けた。 「そしたらね、目が赤くなったのは 病気せいだって言われたの」 俺に背を向けて立っているから、 瑞希の表情は分からない。 「その病気は、あまり 症例がない病気らしいんだけどね……」 そこまで言って 瑞希は黙った。 その少しの時間が とても長く感じられた。 ……そして 瑞希が俺の方へ振り向き ゆっくり口を開いた。 「最後は、高い確率で ………失明、するんだって」      
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