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「どっちの国が正しくて、どっちが勝っても良い。勝ち負けよりも、私達みたいな成人してない子が戦うのは、やっぱり間違ってると思う」
腰から手を離し、スピアを見詰めたまま話し続ける。
スピアは驚いた顔をしたが、黙って聞いていた。
「私みたいな……ううん、私より若い子が学校に行ったり、友達とお喋り出来るような社会、私はそうなれば良いと思って今日まで戦って来た……んだと思う」
そこでカズハはリリィを見た。
"私より若い子"それが誰を指しているのかは瞭然だ。
「スピア上等兵」
「は、はい」
急に改まった呼び方をするカズハに若干萎縮するリリィ。
心なしか、顔も真面目に見える。
「これが私の正義よ。貴女も……自分の正義が見付けられるといいわね」
そう言って笑顔を見せるカズハ。
それは自分の正義と相反する発言であり、哀愁を覆い隠した笑顔だった。
「はい!」
だがカズハの気持ちなど気にも留めていない様子のリリィは、満面の笑みで大きく頷く。
早く戦いが終わればいい、カズハはそう願うと共に、その願いを実現させる為に戦う。
この皮肉な矛盾に気付く事なく……
カズハは戦い続けるのだろう。
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