記念日

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「ふぅ……」 目的の駅を降りて俺は溜め息を吐いた。 実は溜め息は癖なのだ。 まぁそんな事はどうでもいい。 俺は降りた駅のベンチに腰掛けた。 別に乗り換えって訳じゃない。 降り損なった訳でもない。 じゃあ何故此処に留まる必要があるかと言うと…… 人を待っているから。 新たな電車が来て目をやる。 まぁこの時間にあいつは帰ってこないだろうが。 "待ってる"というより待ち伏せに近い…… 俺は携帯を開いてアプリをしながら待つ事にした。 俺が駅に着いてから2時間近く経った頃、そいつは漸く帰って来た。 「よぉ」 俺はそう言って、自分の存在を知らせてから、おかえりと言った。 「は??何で居るの??」 当然の質問だ。 俺が此処で、この場所で、こいつを待ってるのは"常識的"にはおかしいのだ。 俺達は1ヶ月前に付き合って、2週間前に……別れているのだ。 では何故、俺が常識を逸脱してまでこいつを待っていたかと言うと…… 「これ、渡しに来たんだよ」 渡したい物があったから。 「……何、これ??」 彼女は俺が差し出した小袋を見て、少し冷めた口調でそう言った。 俺は変わらずいつもの口調で質問に答えた。 「今日、付き合ってたら記念日だろ??だから……」 「いらない」 しかし彼女は最後まで聞かず、はっきりとそう言った。 「あたしら、もう付き合ってないんだよ??」
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