記念日

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心がズキン、と痛んだ。 「付き合ってないのに、記念日を祝われる覚えは無い」 そう言って彼女は俺を横切って行った。 「…………」 俺は小袋を差し出した右手を、静かに下ろした。 ……んな事は分かってんだよ。 でも……でもな…… 「お前の勝手で俺達は別れた」 彼女は弾ける様にして振り返った。 後ろからでも分かる。 俺を睨んでいる事は…… 「お前の自分勝手の所為で別れたんだよ」 その言葉は俺の予想を遥かに超え、彼女を怒らせた。 「終わった事をネチネチと掘り返さないでよ!!」 「何で勝手に終わらせてんだよ」 彼女は、ハッとした。 「俺はまだ、終わってねぇ」 俺を睨み付ける目を見詰めて、そう言った。 「お前の勝手に、俺は付き合った。今度はお前が付き合え」 そう言って俺は、彼女の右手を掴んで、無理矢理に小袋を渡した。 「俺は、勝手に1ヶ月目の記念日を祝う。それで良いだろ??」 「…………」 それを聞いた彼女は俯いた。 俺から目を反らす為に…… 「じゃあな、元気でやれよ」 そう言って彼女の頭をポンポンと撫でた。 数歩離れた所で…… ポコッと何かが頭に当たった。 ……せっかくキメた所だったのに、台無しだ…… 振り返ると何かを投げた様なポーズの人物がそこに居た。 1ヶ月前に付き合っていて、2週間前に別れた元彼女が。 「いらないってば!!そんな我が侭に付き合えるか!!」 彼女はそう言い捨てて俺の横を走って行った。 「……あ……ははは」 俺は投げ捨てられた小袋を拾いあげてから…… 「あはははは、こりゃ傑作だ!!」 別に自嘲では無い。 なら何が傑作かって?? 渡したかった物を受け取って貰えず、何が傑作かって?? 「それでこそ、俺が惚れた女だ」 2週間振りに彼女らしい所を見て、俺はまだ彼女が好きって事を再確認出来たからさ。 その頑固さも、我が侭な所も、自分勝手な所も…… 全部、ぜーんぶ好きな所だって分かったからさ。
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