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「次は良い恋愛しろよ。俺もお前を忘れて、前に進むから」
「忘れなきゃ前に進めないなら、私は前には進まない」
もう……よそう。
話しても埒があかない。
決意が……揺らぐ……
「じゃあな、さよならだ」
「嫌だ!!」
駄々を捏ねる彼女を俺は無視して電話を切った。
電源も落として枕に顔を埋めた。
「……ばーか、忘れられる訳ねぇだろ」
俺が言った言葉は、全て嘘だった。
あの日、会えないと分かった時……俺は悟った。
俺じゃあ、この娘を護れない。
助ける事も、支える事も……出来ない。
なら俺は、どんな形であれ、彼女の傍に居てはいけない。
護れないと思ってしまった俺が彼女の傍に居る資格は無い。
そんな俺が、彼女の心に思い出として残って良い訳がない。
だからいっそのこと、嫌われてしまおう。
だからいっそのこと、記憶から消して貰おう。
それで彼女は、前に進める。
それが彼女にしてあげられる、最後のプレゼント。
彼女の道を邪魔する者は誰であれ許さない。
そう、俺自身も……
最後の最後に、勝手に護らせて貰う。
彼女の前から消える形で……
彼女の為なら、俺は自分にさえ判決を下せる。
二度と彼女に近付かない、無期懲役を……
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