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仕事からの帰り道、俺は一人家路に着いていた。
今日は一段とだるい仕事ばかり回ってきたなぁ。
そんな事を思いつつ、俺はネクタイを緩めた。
電車に揺られて外の景色を見ると、俺の住む町が見えて来た。
随分昔から居るが、昔と大して変わらない。
俺はこの町が好きだ。
仕事から帰る時、いつもこの電車を使うが、この町に入る最初の駅名を聞いて少しだけ、疲れが癒える自分がいる。
「次は上社、上社です」
おっと、もう着いたか。
俺は椅子から立ち上がって車掌側のドアに向かった。
それはいつもと変わらぬ、一日の中の一時。
昨日と変わらぬ今日。
今日と変わらぬ明日が俺を待っているだろう。
「一葉君??」
俺がそう思っていると後ろから女の声がした。
俺はそんなに女の知り合いはいないが……
振り返ると見知らぬ女が立っていた。
「……誰??」
長い髪は腰まであり、一つに結ばれていて、ヒールを履いているとはいえ……かなり身長が高い。
俺と同じか……いや、もっと高い。
「あ、ひど!!」
記憶をどんなに探ってもこんな特徴的な女は知らない。
見たら忘れる筈は無いが……
「中学の時の同級生」
……それは分からないよ。
俺は取り敢えず、分かった振りをして適当に合わせた。
「おー、久しぶりだな。随分変わったな、分からなかったよ」
「一葉君は変わらなさ過ぎ」
彼女は笑いながらそう言った。
「家どっち??あっちなら一緒に帰ろうよ」
俺は、あぁと言って歩を進めた。
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