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――ドランツが替わりに指揮を執っている少し前、ホフマンは険しい顔で戦況を見ていた。
最早、戦いと呼べる物ではない。
一個中隊にも満たないデル・ヘンケル隊が、ファンデメンド軍の連隊からの一斉攻撃を防いでいるだけだ。
それを戦闘と呼ぶのか、或いはそれが戦闘なのか。
だがこれだけは断言出来た。
これが戦争なのだ。
「敵の通信を傍受しました!敵の指揮官、グスタフ・フォン・キスリングが負傷したとの事です」
通信兵が無線機を振り落とさない様に手で押さえてから振り返り、ホフマンに報告を行った。
「やりましたな、閣下!」
戦勝を確信して喜ぶ兵士達と相反し、ホフマンは険しい顔を崩さなかかった。
「撃ち方止め!撃ち方止め!!」
ホフマンは堪らず停戦命令を出した。
喜んでいた幕僚は首を振ってその命令に意を唱える。
「お言葉ながら閣下、最早我々の勝利は揺るぎようがありません。今攻撃を止めれば思わぬ反撃を受け、将兵に犠牲が……」
「喧しい!!これは命令だ、今すぐ撃ち方を止めろ!」
ホフマンの剣幕に驚いた幕僚は直ぐに停戦を指示した。
司令部から波を打つ様に攻撃が止み、次第に攻撃する者は居なくなった。
人垣の隙間から覗くプリティー・ウィッチ、カズハを遠くから見詰める。
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