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――デル・ヘンケル隊はそのままの体勢で撤退するファンデメンド軍を見ていた。
盾を構えたまま、まだ何かしてくるのではないかと思っていた。
だが後方から車両が向かってくる音を聞き、警戒態勢を解いた。
要請した衛生兵達が来たのだ。
それで自分達の隊長がどういう状態なのかを逸速く理解したドランツは、脇にしゃがみ込むカズハに顔を向けた。
「中尉、衛生兵が来ました!早く隊長を――」
「もう……遅い……」
消え入りそうな声でそう言うカズハ。
胸に手を当てたカズハだけが分かる事実。
キスリングがこの世から消えたという事を、誰よりも早く気付いていたのだ。
「隊長……私、まだ貴方に……」
衛生兵がキスリングの元へ駆け寄り、押し退かされたカズハは尻餅を付いたまま、それを見ていた。
「どうだ!?」
カズハの言葉が信じられないドランツは、今度は衛生兵に問い質した。
だが彼の仕事は、腕時計を見て死亡確認時刻を読み上げる事しか残っておらず、遺体の収容を行った。
「嘘だろ?」
「隊長が……」
「……死んだ?」
口々に発せられる言葉。
あまりにも受け入れがたい事実を前にしたカズハは、ゆっくりと重心を崩して地面に倒れた。
「クールダラス中尉!!」
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