死刑執行人

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「私達があの時生き残れたのは隊長のお陰です。貴方という命と引き換えに、私達は生き延びる事が出来たんです」 事実がどうかは分からないが、カズハはそう思っていた。 この考えも、捉え方によっては皮肉な話だろう。 "多数を救う為に已むなく少数を犠牲にした" それを嘲笑ったキスリングが、運悪くその少数に入ってしまったのだ。 これを喜劇と取るか、悲劇と取るかは個人の見解によって変わるが、これだけは言える。 神という物が存在するのなら、余程冷笑的な存在なのだろう。 「だけど私は……多数を犠牲にしてでも、貴方には生きていて欲しかった。その多数に私が入っていたとしても……、貴方だけには……」 目に涙が滲む。 瞼で支えきれず、ゆっくりと頬を伝った。 泣かないと決めてここに来たのに…… カズハは相も変わらず泣き虫な自分に心底腹が立った。 「全部貴方の所為ですよ……。私が貴方を好きになったのも、私が泣き虫なのも、私が貴方の副官になったのも、隊長以外の人を補佐したくない私が……」 最後は嗚咽に掻き消され、言葉にならなかった。 溢れる涙を手の甲で拭い、カズハは毅然とした顔で敬礼する。 「また来ますね、歴史上最年少の少将閣下。私だけの……キスリングさん」 死者に対する告白。 カズハの想いは、キスリングが死んで初めて明かされるのだった……
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