死刑執行人

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隊長不在の中、カズハは進んで隊長代理を勤め、一年もの間職務に追われていた。 副官が隊長代理を勤めるので当然、副官は不在。 参謀という役職も置いていなかった為、一人で三役の仕事を同時にこなした。 時には心無い言葉を浴びせられていたが、当時からカズハを知っているドランツを始めとする隊員達がその言葉に拳で答えて来た。 多くの人に支えられたからこそ、この重圧に耐え続けて来れたのだ。 それも今日で終わりを告げる…… カズハはブリーフィングルームに入り、全将兵の注目の的となった。 副官を任じられた時は鼻白んだが、今はそんな事を言っていられない。 言ってはいけない立場だ。 「知っている者も多いと思うが、今日から正式に代理の辞が外れ、貴官らの新しい連隊長となるカズハ・クールダラスだ。階級は中佐、来月の任官式で大佐への昇格も決定した。ちょっと気が早いけど、クールダラス"大佐"って呼んでも良いよ?」 ブリーフィングルームが笑いに包まれる。 正確には、当時のカズハを知っている者達だけが笑っていた。 新しく入って来た者は、カズハが副官に任じられた時に浴びせられていた時と同じ、敵意の眼差しを向けている。 何時でも、何処でもこういう輩は存在するのだろう。 カズハはそれらに対して挑発的な笑みを浮かべたが、すぐに真顔に戻って声を上げた。 「概略を説明する」
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