14人が本棚に入れています
本棚に追加
掻いた手を離し、カズハは二人を睨み付ける。
「何度も部下の手を煩わせるのも隊長として問題があるわね……。貴方達、三つの選択肢の中から好きなのを選びなさい」
カズハはそう言って指を折りながら口を開く。
「医務室行きか、軍病院行きか、霊安室行きか」
ドランツ達は再び吹き出した。
身を震わせ、何も言えないでいる下士官二人に対し、笑顔に戻ったカズハは舌を出してこう言った。
「時間切れ。安心して?私の地位と権限で貴方達の二階級特進を約束するわ。おめでとう、准尉さん」
言うが早いか、足払いをして一人を転かしたカズハ。
ブリーフィングルーム前の廊下に、断末魔の絶叫が響いた。
――事が済んだカズハは溜め息を漏らし、中庭のベンチに腰掛けた。
下士官二人はドランツ達に任せ、自分はさっさとその場を後にした。
空を見上げ、また一つ溜め息を漏らす。
「無理も無い、か。暫くは離隊届の受理に追われるだろうな……」
面倒な話である。
副官が居ればそれに押し付けるのだが、現段階では未だその席は空位のままだ。
キスリングが出来なかった仕事を替わりにするつもりだったが、いざそうなると面倒な事この上ない。
「私……隊長に向いてんのかな……?」
副官になった時も抱いた疑問だ。
その疑問が晴れないまま隊長になったのだ。
今のカズハに分かる筈も無い。
最初のコメントを投稿しよう!