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「いいよ、でも……言葉に出来る様な物じゃないかもね」
そう言うとスピアは顔を上げ、カズハの顔を見詰めた。
「正義って他人が決める物じゃないと思うな。人に与えられた正義なんて、正義とは呼ばない。それは自分で見付ける物じゃないかな?」
スピアは黙ってその言葉を聞いた。
固より否定するつもりもないし、将来の為になる事を言われる気がしたからだ。
「でも私達、軍人が自分の正義を振り翳すのはご法度よ。私達は命令を受けて人を殺す集団なの。正義を与えて貰う側なのよ」
「じゃあ、自分の思う正義と相反する正義を与えられたら……隊長はどうするんですか?」
実に難しい質問だろう。
軍人という職業上、そんな事は往々にしてあるのだ。
「その時は自分の正義を貫きなさい。ただ、自分の正義を貫ける様な人は、軍人には向いてないと思うな」
権力者の言いなりになっている方が遥かに楽なのに、自分で考えて自分で行動しなければならない。
縦割り社会の軍で働くには不向きだろう。
「隊長の正義ってなんですか?」
聞かれるだろうと思っていた質問を投げ掛けられ、カズハは考えを纏める為に悩んだ仕草を取り、軈て数度頷いた。
笑顔でスピアに振り返り、胸を張って腰に手を当てた。
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