貞子さん

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後を付けられていると感じる様になったのはごく最近だ。 人も区々、おじさんだったり子供だったり。 最初は幽霊と気付かず凄く怒った。 傍から見たら変な人だったかも知れない。 私は立ち止まって貞子さんに振り返った。 当然の事の様に立ち止まる貞子さん。 「…………」 「…………」 この心地良い沈黙が今は不気味だった。 幽霊を怖いと感じた事は今まで無かった。 あって当然の恐怖が今は怖かった。 その恐怖を振り払うかの様に口を開く。 「こんばんわ」 「…………」 可愛らしい笑顔で言ったつもりだけど、無反応というのも却って切ない…… 「あ、こんばんわの"わ"は愛嬌的誤字と言いますか……」 「…………」 はい、無視ですね。 一葉ちゃん怒っちゃうぞー! でも怒ったところで事態が打開出来るとは思えない。 私も無視しちゃおっ! 今風に言えばシカトって感じぃ? いつもならそんな感じで流していたと思う。 しかし今回はそんな軽い気持ちで抑えられなかった。 何日もこの状態が続いていたからかも知れない。 思い浮かんだ文句を口にしたかった。 「あのさぁ」 俯いた貞子さんの顔が僅かに上がる。 白い唇だけが髪の毛の隙間から見えた。
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