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まだ春の風が冷たい4月の初旬。1人の男がここ東京消防庁新宿消防署を訪れていた…。
東京消防庁、都内23区と立川・八王子・多摩を管轄とし消防職員約18000名、80の消防署、3の分署、206の出張所を要し、世界でもトップクラスの消防組織である。
その男は私服から真新しいオレンジの執務服に着替えていた。慣れていないのか、緊張しているのか、男は着替えるのに少し戸惑っているようだ。しかしこのオレンジの執務服こそ消防士なら誰もが憧れると言う、東京消防庁特別救助隊(通称:東京レスキュー)の執務服である。その男は着替え終わると足早に車庫の前に走り出して行った。しかし車庫の前に行くのは彼だけではない、青の執務服のポンプ隊員、白の執務服の救急隊員までもが、車庫の前に並んでいた。時刻は午前8:30になろうとしていた。
これが消防士恒例の朝の行事、「大交替」である。この大交替で前日の火災等の出場記録、伝達事項を伝えるのだ。しかし今日はいつもと少し内容が違っていた。そして男が叫んだ。
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