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俯いて黙っているだけでは何一つとしてことが進展しないのは、ヒーロー自身がよくわかっていた。
しかし、吐き出すことができない。
何で悩んでいるのか、何が心をよどませているのかを。
「卵を割らなければ、オムレツは作れない」
それまで口を開くことのなかった純也が、急に口を開いた。
またもや知らない言葉に、ヒーローは先と同じように静止することしかできなかった。
「オムレツを作りたいなら、卵を割らなければいけない。どういうことかわかるか?」
「いえ……」
「物事の最終地点にたどり着くには、始めの一歩を踏み出さなければ何も始まらないってことだよ」
その言葉が何を意味するのか、安易に想像できた。
わかっていても行動に移すのは簡単ではない。
ヒーローはそれを心底感じた。
だが、こうして沈黙しているだけでは何も変わらない。
意を決してヒーローは自分の悩みを打ち明けることにした。
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