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「最初に僕がヒーローをやってるっていいましたよね? 人を救ってたんです。怪物を倒して。最近までは『助けてやってる』って思ってたんです。でも、誰からも頼りにされない、感謝も、信用もされない」
ここでヒーローは言葉を止めて、淳也の反応を盗み見た。
淳也はまだ興味のなさそうに聞いていた。
それが話しやすい雰囲気を出している。
「それで空しくなって、フラフラして、いつの間にか人ごみの中にいたんです。人目に晒されるな、そんなことはいつも言われてたのに。でも、何のお咎めもなかったんです。所詮、僕のことなんで見ていなかったんです」
「ブルーとかイエローは?」
意味不明な質問にヒーローを仮面の下で目を丸くした。
「ほら、レッドがいるならブルーとかイエローがいるだろ? そいつらは何もしないのか?」
「そんなのは夢物語です。僕が全部やってるんです。僕がやってやってた、そう思ってたのに……。自己満足だったんです」
俯き、拳を握り、ワナワナと震わた。
仮面の下では一筋の涙が流れていた。
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