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「己の欲せざる所は人に施すなかれっと」
期待に胸膨らませ文字を入力する。
検索結果が自分の抱える問題を解決するのでは。
そんな思いもあった。
だが無情にも、検索結果に引っかからなかった。
単語というよりも一つの文章となっていた検索対象が調べられる訳がない。
携帯を使いこなす中高生ならすぐにわかっただろうし、検索するにしても期待はしなかっただろう。
しかしヒーローは、辞書機能に期待していた。
ただ意味が出ることだけを期待していたのではなく、それが何かしらのプラスになると思っていたのだ。
だから受けたショックは軽いものではなかった。
意味を調べることもできず、何も進展しない。
ヒーローは仰向けに寝転んだ。
自分で作ったスペースをはみ出し、体を草が責めるのも気にせず、寝転んだ。
流れずに漂う雲。
常に彼の心中と逆を行く。
どちらかが意図しているわけではない。
ヒーローは出て行く場所を無くした喪失感が暴れるのをなだめられずにいる。
雲は無限に広がる空の中にいながらに、動くことをせず漂う。
「僕も雲になりたい。風が吹くままに動きたい。自分で動くのは疲れた……」
彼の思いを聞き入れる者などはいない。
そんな彼を現実に連れ戻す。
そんな音が懐で鳴った。
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