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「わかりました」
「そうか、じゃあ言ってみ?」
「はい。『して欲しくないことをするな』っていうことの逆は『して欲しいことをしろ』ってことですよね」
長い思案の末にたどり着いた結論に、自己満足し満面の笑みで淳也に自分の持論を言った。
もちろん仮面を被ってるので表情がわかるわけがない。
だが、それが淳也に伝わったのか微妙に顔をほころばせた。
「正解だ。この論語、あ、コレは論語って言うんだけどな。この論語の根底に何があるか。それが問題なんだ」
淳也はイスに深々と腰をかけた。
それと対照的にヒーローは身を乗り出して聞く姿勢になっていた。
「またお前に考えてもらうぞ。例えばお前からすれば地球を侵略するのはして欲しくない。だからそれに対抗するわけだ。だけどな、侵略するほうからすればお前みたいなヒーローは嫌なんだ。どうしてかわかるか?」
「えっと、それは自分たちの侵略を邪魔するから……?」
「そうだ。コレでわかるのは個人個人によって『欲せざるところ』が違うことだ」
今までなく真剣な表情で話す淳也にヒーローは見入ってしまった。
「だから、この論語の根底にあるものは『エゴイズム』なんだ。利己的で自己中心的なものなんだよ。それが大昔に言われて、お偉いさんの言葉になってるんだ」
利己的、エゴイズム、自己中心的。
どれも自分勝手である様を表す言葉である。
それが何を意味するのかヒーローにはまだわからない。
「どういうことですか?」
淳也は黙ったまましゃべらない。
きっと自分で考えろ、ということだろう。
ヒーローはまたもや思案の海に飛び込んだ。
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