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再び黒衣を羽織り万年筆を机の上に置くと、淳也は手を出口に向けた。
「ほら、終わったろ? 帰っていいぞ」
「あの……料金は?」
「どうせ持ってないんだろ。いいから、元気で暮らせよ」
立ち上がり、出口へ向かった。
ドアを開けて、出る前にヒーローは淳也のほうを振り向き言った。
「また、来てもいいですか……?」
「好きにしろ。次来るときは、珍しいものもってこいよ。地球にないものだからな」
「はい、わかりました」
一度頭を下げ部屋を出る。
外は暗いというより、漆黒の闇になっていた。
受付を見ると、まだ姿勢が変わらない受付嬢がいた。
一礼だけして、出ようとすると小さい声で呼び止められた。
「先生が黒衣脱ぐときは、真面目にやってるとき」
真面目じゃないときがあるのか、と心配になったが少なくとも自分には真面目だったのがわかってヒーローは安堵した。
「自分がいいならいい」これもエゴイズムだな、と顔をほころばす。
「ありがとうございました」
それだけ言うと建物を後にした。
ヒーローが空を見上げると、心境と同じように澄んだ空と満天の星が広がっていた――。
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