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見渡す限りの夜景。
まさに百万ドルの夜景というのが相応(ふさわ)しい。
しかし、淳也にはそんな夜景を楽しむ余裕などなかった。
フェンスを挟んで一対一。
届きそうで届かない距離に、淳也は苛立ちと焦りを覚えていた。
何かを言わなければならない、そんな思いが頭を支配するものの、なかなか声が出ない。
声の出し方を忘れてしまった鳥のように喘ぐ。
額から脂汗を滲ませ、笑っている膝で支える体は今にも倒れてしまいそう。
「どうしてですか」
掠れている声はフェンスの向こう側にいる女性には届かず風に飲み込まれる。
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