空の受け止め方

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「どうしてなんですか」   叫ぶように淳也は発した。 女性はようやく淳也が居たことに気がつき、それまで虚ろだった瞳に光が灯った。   光が灯った瞳には確固たる意識が浮かび上がっている。   肩ほどまである髪を風に揺らしながら、女性は口を開いた。   「疲れたの、だから自殺するの」   言葉には悲痛そうな感じもなければ、鬱々とした感情もない。 むしろ微笑んでいる。   いかなる人が見ても、人生を諦めたようには見えない。 なぜ、自殺するのか。 誰に問いかけたとてわからないだろう。   淳也だってわかってはいない。 故に足を震わせ、汗をかき、苦悶の表情を浮かべているのだ。   「疲れただけで死ぬんですか。前に言ってましたよね『淳也君と話してると気分が楽になるよ。カウンセラーやったら?』って。由美先輩がそういったから、今大学で勉強しているんですよ」
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