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良いわけがない、そう叫ぼうとしたが由美が口を開くのを見て淳也は沈黙した。
「疲れちゃったのよ、生きるのに。人生に」
悲しそうな顔はしていない。
そんな顔をしているのは淳也一人だ。
「ねえ、淳也君は『杞憂』って知ってる?」
どちらかが一方的に話すだけで、ゴルフの打ちっぱなしのようだった会話に突如キャッチボールが入ってきた。
淳也はボールを後ろに逸らしてしまった。
しかしすぐに拾って投げ返す。
「知ってますよ。空が落ちてくる、というありもしない不安にを感じた人がいたことからくる故事ですよね?」
「そうよ」
質問に意図が淳也には読み取れなかった。
いや、全て読み取れていないと言った方が正しい。
なぜ自殺するのか、自分を呼んだのか。
何一つとして理解はしていなかった。
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