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ようやく言葉のキャッチボールが出来るようになり、少しばかりの余裕ができた淳也は由美を初めて凝視した。
風になびく黒髪が、妖しく、美しい。
白いワンピースに身を包み、髪が見せる妖艶さとは程遠い可愛らしい面を浮かび上がらせる。
足元まで視線を移動させたところで、ワンピースと同じ色の薄い物体を見つけた。
もちろん、それは遺書であって自殺の意志を示すものだ。
それでね、と由美が話を続ける。
白く薄い物体から白いワンピースに淳也は目を動かした。
「私は不安で不安でしょうがなかった。空が落ちてくる、っていう不安に毎日怯えてた」
ありもしない不安、まさに杞憂。
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