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由美は淳也の方に向き直った。
「空ってどうやって受け止めるんだろうね。私にはわからない。だから、飛び降りる。空から逃げるために、落ちてる間は空も追いかけてこれないでしょ?」
言葉が言い終わるか、言い終わらないかのうちに由美は淳也を見たまま、後ろ向きで飛び降りた。
飛び降りる瞬間の由美の顔は、ひどく安らかなものだった。
苦痛から解放された、そんな思いが全身を駆け回っていたのだろう。
一歩を踏み出せない淳也とは対照的に、由美は一瞬で空から遠ざかり、そして空の上へと舞い上がって行った。
その後のことを淳也は覚えてはいない。
ただ、大学には通い続け、カウンセラーを目指すことを止めようとはしなかった。
そうすることで、彼女が最後に言った、「空の受け止め方」の答えが見つかる気がしたから。
何よりも、二度と由美のような人を出したくなかった。
「空ってどうやって受け止めるんだろうね」
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