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「まず始まりは僕が幼稚園の頃じいさんが言ってくれた言葉からだったんだ
と言ってもあまりに小さすぎて所々しか覚えてないけど“友達”の話をしてくれたのは覚えてた
戦争中何度も死にかけたがその友達に助けられてきた事、逆に助けた事何度も話してくれた
いつの間にか友達というものに強い憧れを持っていたんだ
でも…小学校中学校と…
僕の期待していたものとはかけ離れた仕打ちが待っていた」
一点を見つめどこか遠くを見るように話を続けていく
「多分ゲーム感覚だったんだろう
あまり人付き合いが上手な方じゃなかった僕を数人の男子がからかい始めた
それから徐々に人数が増えていき気がつけばクラス全員になってエスカレートしていったんだ
地獄だった……
どんなに泣いても無視しても誰も助けてはくれなかった
先生達も見て見ぬ振りだったし…」
…俺にも覚えはある
している方は遊びでもされている方は氷室の言う通り地獄だった…
「じいさんは嘘をついたんだと子ども心に恨んで話もしなくなっていって…
そんな事を2年も続けたある日じいさんは倒れ、すぐ危篤になって…
かけつけた時には話もできない状態だった
悔やんだよ…何で2年も無視し続けちゃったんだろうって…
もっとちゃんと話しておけば良かったって…
そんな僕の心に応えるかのようにじいさんは意識を取り戻すと……
僕を呼んだんだ…
小さな声で…
『信じろ…いつか必ずお前の心に応えてくれる友達に会えるから…』
そう言い終えるとそのまま眠るように息を引き取った」
氷室はポケットから懐中時計を取り出すと寂しそうな目で見つめている
『じいさんの形見…』
そう言っていたのを思い出す
「僕はじいさんの言葉をもう一回信じることに決めた
勿論いじめは無くならなかったけどね
でももう泣いて誰かを恨むのは嫌だった
中学に上がっても続いたけど僕には没頭出来るものがあったからいじめだけが頭の中を占領することはなかった」
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