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まるで運命だと言わんばかりの言葉に、私は反発した。
他の誰でも良いなら、その誰かに渡せば良いのではないか。
少女はかぶりを振る。
「私は最初に出会った人に渡すために産まれたのです。二度、三度とはいきません。
貴女でなければいけないのです」
一歩も引き下がらない態度に押され、水晶を受け取る事を受け入れた。
「運命だといえば運命です。偶然といえば偶然です。ならば、偶然が運命だったら、運命が偶然に過ぎなかったら…それでも私は貴女に水晶を渡していると思います。
偶然でも必然でも運命でも関係ないです。これから起きる事も、です」
少女は満足気にそう言って去った。
使い方も使い道も意味もいつか解ると、なにも言わずに去った。
今思えば、あの子は何も知らなかったのではないかと思う。この水晶を私に渡すためだけに産まれたのは、本当のことなのだから。
少女は店の前の歩道でトラックに撥ねられて、死んでしまった。
撥ねられる直前、満足気に私を見ていた。
「私は貴女にコレを渡すために産まれました」
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