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第二十六夜話 真夏の夜の夢
これは15年程前に私の身に起きた実話です。
私の実家は食料品を扱うお店を経営しているのですが、ある夏の夜、店を夜中の1時近くまで開けていたことがあるのです。
なぜそんな遅くまで開けていたかと言うと近所で会合があり、親が会合に行ったまま帰ってこないので私が店番をしながら親が帰ってくるまで店を開けていたのです。
しかし、実家のまわりは梨園に囲まれているような田舎で街灯すらありません。ですから、こんな夜中だと実家は暗闇にポツンと明かりを灯しているようなそんな感じになるのです。
当然、夜も10時を過ぎるとお客さんなどくるはずもありません。
なのに、夜も12時をまわったころ一台の自転車が店の前に止まりました。
見ると、籠に食料品の買い物を一杯積んでいます。
『こんな時間にやってる店はないはずなのに…』
私は不審に思いました。
すると20才くらいの女性なのですが、すーっと店の中に入ってきました。
表情は固く、とても暗い印象を受けました。
「何かお探しでしょうか?」
私は声をかけました。
「あの… あの… 」
「はい?何でしょうか?」
「あの… 薬… 薬…ありますか?」
「いや、うちはパン屋なので薬はちょっと…」
すると女性は奥の棚を指さしました。
「薬… 」
「ああ、これは、うちは置き薬の会社もやっていますので、店に置いてあるんですよ。ただ店頭販売はできないんですよね…。良かったら置き薬を明日ご自宅にお届けしますよ。」
と説明すると、
「はい…。お願いします。」との返事。
私は彼女から住所と名前を教えてもらった後、彼女は暗闇の中へ帰ってゆきました。
翌日、早速教えてもらった住所へ出向きました。
しかし、おかしいのです。家に着いた後、庭にいたおばあさんに事情を話したのですが、そんな女の子はうちにはいないと言うのです。
表札の名前も住所も間違いありません。
しかし、おばあさんは老人二人で暮らしているので子供はいないと言い張ります。
その時です。
微かにピアノの音が家の二階から聞こえてきました。
老人の二人暮らし…
ピアノ…
私は不審に思いながらもその場を後にしました。
その家は畑の中にポツンと建っているようなそんな家でした。
翌日、その話を弟に話したら、そんな所に家はないはずだと言い張ります。
そんなはずはないと弟に話したら、一緒に行ってみると言い出しました。
私は車に弟を乗せ、昨日の家につれてゆきました。
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