バイト

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最初のあの(一方的な)出逢いから何度か1-Aの教室の前を通り過ぎたりしてみたが、あの子はいない事も多く、いたとしても相変わらず本を読むばかりでこちらを見ることも一度もなかった。 「俺…結構有名人だと思ってたんだけどなぁ…。」 いつの間にか桜は散り、梅雨の時期に差し掛かっていた。 今日も梅雨らしい天気で空は厚い灰色の雲に覆われている。 「そりゃぁ、恭ちゃんほどの美貌を持ってる人はなかなかいないからねぇ。有名人っちゃ有名人だよね。」 菊は俺の横で携帯をかちゃかちゃ弄っている。 そうなのだ。 俺はここら辺ではちょっとした有名人ってくらい格好いいらしく、俺に近づきたいがためにこの学校に入る女もいるってくらい有名らしい。 でも、あの子はそんな俺が教室に遊びに行ってもなんの反応も示さない。 「なんでだ…?」 最近の俺の頭の中はあの子のことでいっぱいだった。 名前も知らないし、横顔しか見たことがないけど、なんでかすごい気になる。
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