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「心労?らしくないなあ。弘弥に悩む心なんてあったのか…」
「心配?らしくないなぁ~。登史に人を思う心があるなんて。」
皮肉混じりに言い返してやった。悩むっつかあれは悩まなきゃおかしーだろ!!
「で、何があった?」
「……………」
「弘弥?」
言えない。あんな事言えない。言ったらどうなる?言ってどうなる?登史の事だからどーせ「寝てるお前が悪い」やら「普通すぐ起きるだろう」とかそんな言葉を返してくるはず。
それを本気で受け止めてしまう位、俺はショックを受けているから答える事なんてできない。
…というか、登史は本気でそう言うだろうけど。
「…弘弥。そんなに辛い事なのか?勉強どころじゃない話なのか?」
俺の顔を覗き込むように登史が言う。
いつもはどこに黒目があるのかわからない位細い目をしているのに、見開いているのか登史の黒目が俺を真剣に見ているのがわかった。
「…昨日教室でキスされただけ。」
「誰に?」
「わかんね。わかってたら俺は悩まない。」
「後ろ姿も見なかったのか?」
「足音聞いただけだなー。夢うつつで。あとはフルーツオレ」
「フルーツオレ?」
「口に甘い匂いが残ってたんだよ。いろんな果物が混じったような…フルーツオレみたいな匂い。」
「あぁ。それで俺にフルーツオレ飲むか聞いたのか。」
…珍しい!!登史が真剣に俺の悩みを聞くなんて!!
だから今日は雨が降りそうな空なのか?…そうだなきっと。
朝なのに暗い頭上は今にも泣き出しそうだった。
「うん。とりあえずフルーツオレ飲んでる奴に片っ端から声かけようと思う。」
「…弘弥お前やっぱ頭悪いな。」
学校に着く頃登史が呟いた。
「んなっ!?それ以外方法ないだろ?」
下駄箱の前で離れている登史に怒鳴った。頭良くてもそれ以外に方法はないだろ。どう考えても。
「まぁフルーツオレ飲むやつなんてこの学校でも200人はいると思うが。それでもやるならやればいいさ。俺ならしないけど。それより!!今は勉強だ。あと40分位しかないんだからな。」
「…はいはい。」
200…確かに多いな。
そう考えながら俺と登史は階段を登り教室へ向かった。
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