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どんなに願っても、叶わない恋の一つや二つは誰の人生にだって一度位はありますよねー。
勉強の合間、なんとなく見ていたテレビの中で流すように言うタレント。
思わず頷いてしまう。
「一樹(かずき)何テレビ見ながら頷いてんの?」
「ん?叶わない恋は誰にだってあるよなって話。」
「ふーん。俺、無理矢理叶えるタイプだからそれ当てはまらないや。」
珈琲を飲みながら由崇(ゆたか)は淡々と答えた。
「無理矢理ってお前…相手の意思や感情は無視か?」
「俺はいけそうなヤツしかいかない。断るヤツや反発するヤツに興味はないんだよ。」
「…それってなんか微妙じゃね?」
由崇は返事をせず淡々黙々と宿題を片づけていく。
そんな由崇を一目したあと一樹も勉強に集中した。
次第に陽が傾いてきて、オレンジの光が二人を照らす。
勉強が一段落した一樹はふと目線を机から上げた。
途端、由崇とばっちり目が合った。お互いにしばらく凝視…なんとも言い難い時間が流れる。
「そんなに見とれる?俺の顔。」
無音を裂くように口を開いたのは由崇だった。
「は?んなわけねぇだろ!!顔あげたらお前がこっち向いてたんじゃねーか!!つまりそれはお前が俺を見てたって事だろー?」
「違う。俺はお前の中の俺を見てたんだよ。」
「…?由崇って時々意味不明な事言うよな。何それ。」
「……叶わない恋の一つや二つ…だっけ?」
頬杖をつくというだらけた体勢をとりながらも、由崇は通る声で、射るような目をして言った。
「一樹はそんな恋してるんだ?」
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