夕方の誘導作戦

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「え?過去だよ過去!!今はしてない。」   「その恋はどうけりをつけたの?」   由崇は少し笑いながら問いかけた。   「どうって…諦めた…というより心の奥に直したって感じかな?…ふいに思い出したり、思い直したりして切なくなるけどさ。」   「押しの弱い一樹らしいなぁ。」   「おい!!せめて優しいと言ってくれ!!立場上言えない相手とかいるだろ…普通。」   一樹は筆記用具を片づけながら由崇を睨む。由崇はそれをかわすように目を伏せた。   「伝えるのは自由なのに…。相手を考えて自分一人不幸に酔うなんて考えられないね。俺を悩ませるお前だから、お前も悩ませてやる。そん位の勢い持ったら?」     「…自分街道まっしぐらの由崇には俺が何言っても無駄だな。」     自分の考えを否定され、少しイラつきながらも一樹は冷静に言い返す。 そんな話をしているうちに一樹は勉強道具を片づけ終えた。     「じゃあ俺帰るわ。お前と勉強すると負けず嫌いが刺激されるのかな?こんな俺でも集中できるんだよなぁ…なんでだろ?」   「純粋に俺が勉強中喋らないからだろうよ。」   見送りに立ち上がった由崇がいつもの無愛想な顔をして言う。 「俺も少しは由崇みたいになりたいや。」   「なれるよ。少し勇気を出して自信を持てばいいだけだ。」   由崇は一樹の目を見て言った。   「さっき由崇が言ってたのなんだっけ?悩ませるとかなんやらーって」   「あー…俺を悩ませるお前だから、お前も悩ませてやる。ってやつかな?」   「そうそう!!それ!!それならできそうっつか考えられそう。」   一樹は軽く笑って言った。   「俺は恋で悩んだ事はないからな…一樹の気持ちは理解できないが叶わないと決めつけるのはよくないと思うよ。」   「叶わない恋の一つや二つ…叶えない恋の一つ。叶えてない一つ…が正しいのかもな。」  
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