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横にいる和斗さんの視線を感じながら、コップの底に視点を合わせて喉に流し込む。
「涼貴涼貴!!こっち見て!!」
途中、声をかけられちらりと目を向けた。
「!!!!」
目を向けた次の瞬間、俺のベッドと上半身がお茶まみれになった。
「かっ…和斗さん何して…うぅ…鼻痛ぇ…!!」
効果音にするとげほとかごほとかそんな感じの咳も同時に出た。鼻には逆流したら起こる独特のツーンとした感覚が広がる。
目を向けた先にあったのは顔面を崩壊させた和斗さんがいた。………つまり有り得ない位の変顔。
整った顔立ちの人が変な顔をすると驚く位に崩れるよな…
てかなんでいきなり変顔!?
「あー。和斗さんって言った!!イエローカード2枚目!!」
「は!?まじっすか!?」
「……まじっすか!!はい一応敬語だから3枚目~これでレッドカード!!」
「………せこっ!!」
こぼれて少なくなったお茶を飲み干すとグラスを和斗さんの右手が奪った。
その代わりに左手からパジャマの上の部分が渡された。
「とりあえず寝巻きの上も着て早くご飯食べようか。勉強する時間もあるし。」
「はぁ…。」
ため息ともとれそうな返事をして、渡されたパジャマのボタンをとめていく。
なんなんだ?なんでそんなに…
リクエスト?
リクエストって…一体なんだろ……
ボタンを止め終えてゆっくり立ち上がる。
まだ少し足下が浮いた感覚でふわふわとしてバランスがとりづらい。
それに気づいたのか気づいていないのか左側にいる和斗さんが支えるように、俺の背中に手をまわし右肩をぐっと握るように押さえてきた。
「まだふらつくだろ?階段気をつけないとな。」
「……」
やさしい表情でこっちを見る和斗さんの顔に一瞬見とれた。……気がした。
なんだろう。このなんとも言えない変な感じ。
和斗さんが敬語じゃなくなったからかな?
妙にこう…あぁ…わかんね。
心の奥の方がグイッと引っ張られるようなそんな感覚。
浮ついた足で降りる螺旋階段は、自然と俺の体を和斗さんの方へと傾けさせた。
ちらりと和斗さんの顔を見るとなんとなく笑っているように見えた。
………なんとなく。
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