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昼に食べた朝飯が少なかったせいか、やたら豚カツがうまかったせいか、箸がいつもより進み白ご飯を二杯もおかわりしてしまった。
ちらっと前にいる和斗さんを見る。
ゆっくりと食べる和斗さんと早食いで今日は大食いの俺。
今まで食べ終わりが同時って事は無かったんだけど今日は同じタイミングで食べ終わりそうだ。
「あの…レッドカードのリクエストって何?」
箸を置き、恐る恐る尋ねてみる。
本当は名前を呼んだ方がいいんだろうけど、呼び捨てが妙に気恥ずかしくて呼ぶに呼べない。
……このままじゃ早くもレッドカード2枚目が登場しそうだな…。
箸休めの浅漬けをポリポリと何かを考えるように食べていた和斗さんが、箸を置いて見据える。
なんとなく怖く見えるのは俺の心境のせいだろうか?
「それでは言うとしますかね。」
見据えた無表情な口角が上がり、眼鏡の奥が細まる。
「まず、拒否権は無し。そして…子供じみた事もアリ。これは互いに言えるから涼貴も覚えておいて。」
「はぁ…」
初めて会った時のように滑らかな口調で話す和斗さんを見て気づいた。
今、気づいた。
この人は前もって考えている内容を話す時はやたらと早口になるって事に。
…てことはこの発言もこの食事中に練られたのだろうか?
だとしたら俺に抜け道は無いんだろうな~。
それとなくわかる。和斗さんは網を張るタイプなんだと。
あくまで俺のカンだから…なんとも言えないけどさ。
「それでは…まず、リクエストを三つに増やす。」
「はっ!?三つ!?そんなガキみたいな……」
あ、子供じみたってこういう事か?
こういう事なのか?
「最初の一つはこれからリクエストする二つの用件を拒否及び変更、停止はできないものとする。」
「………」
機械の音声のように詰まる事なくすらすらと言葉が続く。
「二つ目のリクエストは…これから互いに残業や居残り、友人との交際が無い限り帰宅したら一緒にお風呂に入る事。」
………………?
は?
風呂?何故風呂?
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