よいトコのBath room

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朝。 なのか? 目を微かに開けると真っ暗で何故か暑くて息苦しい… 外から微かに雀が鳴いているのが聞こえてきた。 と、同時に目を見開いたら視界に丸いものが… え?あれ?これは… 和斗さんのパジャマのボタン!? 近いなんて距離じゃない。 まるで目に入りそうな距離だ。 少し上を見上げると和斗さんの緩んだ寝顔が見える。 そこで初めて布団の上から俺を抱きしめるように包んでる和斗さんの腕があるのを知った。 起きて早々、外にも聞こえそうな勢いで心臓が早く体の中で鳴り響く。 体温による熱さに緊張と驚きが入り、汗がじわりと滲むように感じて更に熱が増したような気がした。 ちょっと…布団をどけたいけど… 抱きしめられてる腕をどけるのも…微妙だよな? とりあえず今は離れたい。 今の俺は腰を丸めている。 理由は簡単で単純。 悲しいかな生理現象… トイレに行って用をたせば問題は解決するけど この腕とか、ちょっと絡んでる足とか 何より抱きしめられてる事の嬉しさが、俺をベッドから降ろさせてくれない。 誰かに抱きしめられて寝るのはこんな感じなのか… 少し鬱陶しくて暑苦しくて、けど離されたくない離れたくない…時折無性にしがみつきたくなる。 なんとも言えない不思議な感覚と安心感が同時に襲ってきて心が右往左往する。 ふと和斗さんの腕に手を伸ばすと掛け布団の上で氷のように冷え切っていた。 もしかしてと思ってそのまま首あたりに手を移動させると、そこも同じように冷え切っている。 「和斗さ…。布団にちゃんと入ってくだ…入らないと。」 昨日のルールを思い出して慌てて言い直す。 まぁ…こんな時まで覚えてないだろうけどさ。 「あぁ…うん。」 瞑った目元を少ししかめて和斗さんは乗せていた手を布団の中へ…じかに俺の上に乗せて抱きしめてきた。 ひやりと冷たい腕が俺の体温を奪う。 けれど奪われてもなお俺の熱は引かない。 むしろ余計に増してきた… きっと和斗さんは無意識なんだろうな。 昔の恋人とかともこうして寝ていたはず。 …もっと昔は和斗さんのお母さんや父さんが、和斗さんにこんな事をしていたのかなー。 きっと和斗さん本人はきちんと感じてはいないかもだろうけど、幸せな子供時代だったのだろう。 俺に対する態度とか行動とか、感情の汲み方とか…接しているとそう感じる部分がある。
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