ファイルⅠ・憑依

40/41
203人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
  「僕は、養子として父に引き取られましたが……実際に血が繋がっているんです」 「本当の親子って事ですか?」  聡美の問いかけに、那智は頷いた。 「僕は愛人の子供で……小学生の時に母が亡くなったので、父と義母に引き取られました。  義母と父の間には子供が出来なかったので、跡継ぎとして仕方無く引き取ったそうです」  決して明るいとは言えない過去を淡々と語る康介は、どこか那智と共通する物を持っているように見えて、聡美からすると少々不気味だ。 「そんな事、誰が言ったんですか……?」 「僕が仁科の家に入った日から毎日、父と義母から言い聞かせられてきた事です」 「……信じられない。  自分の子供に、そんな扱い……」 「世の中には、そういう親子も存在するんですよ。  親を愛せない子もいれば、子を殺す親もいる――それが現実です」 「……え?」    
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!