#1 十年後

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ただ、自分は『九尾』を悲しませたくなかった事は覚えている。 後ろめたさはあるが、後悔をしているわけでもない。 なんというか、絶対に会えると思うからだ。 この自信はどこから湧いてくるのかはわからないが、絶対に会える気がする。 もし会えるとしたら、今はどんな風に成長してんのかなぁ…。 「おい、洋大?」 おっといけねえ。 反芻してる内に口を動かすのを忘れていた。 どこまで話したっけかなあ…… 「――まあなんだ……迷子になった時、妖族と会ってな。そん時の、一緒に遊んだ時の夢だったよ」 俺はそれで話を締めて、煙草の灰を脇に置いておいた灰皿に落とす。 「妖族?」 俺の背中に、意表を突かれたような視線が向けられる。 「ああ。とっても綺麗な雌狐さんだったよ」 俺は肺に紫煙を吸い込む。 「雌狐か……。誑かされたな、お前」
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